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★-----ベトナム料理の理想像
ベトナム料理を食べてみると、いくつかの特徴に気が付くことでしょう。
日本ではタレなどを付けてそのまま食べる揚げ物も、たくさんのハーブや生野菜で包んで食べます。麺料理にたくさんの香草を加えたりもします。
全体的に少し甘くて酸っぱい味付けのものが多く、食べる時にレモンを絞ったりすることも。また、いろいろな料理にトッピングされる香ばしく炒ったピーナッツやゴマ、揚げねぎ。和え物などに添えられるのは、食感の良い揚げ海老せんべいや、焼いたライスペーパー……。
これらの料理の特徴は、ベトナム人の考える「料理の理想像」からきています。
ベトナム人は「五味―五彩―二香」を大切にし、料理を作り上げていくのです。各地域により味付けの好みの違いなどもありますが、ベトナム料理全般に言えることです。
★-----五味―五彩―二香
「五味―五彩―二香」ってなんでしょう。わかりやすく説明してみます。
〔五味 ngu vi〕
素材や調味料の五つの味
塩気=man 塩、ヌックマム、しょうゆ、魚醤や蝦醤、味噌などの塩気
酸味=chua レモン、酢、タマリンド、トマトなどの酸味
辛味=cay 唐辛子、こしょうなどの辛味
甘味=ngot 砂糖、ココナッツジュース、さとうきびなどの甘味
コク(油脂)=beo 油、脂、種子類、ココナッツなどのコク
〔五彩 ngu sac〕
それぞれの料理素材の五つの色
黒=den、赤=do、青(緑)=xanh、白=trang、黄=vang
〔二香〕
素材が作る2つの香り
香りが良い=mui thom−ハーブや、にんにくやしょうがなどの香味野菜、調味料などの香り
香ばしい=bui−揚げねぎやにんにく、炒ったピーナッツやごま、焼いたライスペーパーなどの香ばしさ
イメージがわきますか?
★-----生春巻の秘密
1つの皿の中にこれらの要素ができるだけ多く満たされている料理が、見た目も味も「おいしい料理」ということになります。日本料理が「素材の味をいかした料理」であるならば、ベトナム料理は「素材に合うように五味―五彩―二香を取り入れた料理」となるでしょう。また、その料理の中にこれらの要素が入れにくい場合は、タレや添え物などで補うのです。
皆さんがご存知の「生春巻」を例にご説明しましょう。
海老やレタスの入った生春巻き「ゴイクオン」に必ず添えられるのは「ピーナッツ味噌ダレ」です。日本でヌックマムのタレが添えられることがあるようですが、ベトナム人の好みには合いません。なぜピーナッツ味噌ダレなのかと言うと、この五味と大きく関係があります。生春巻きに入る素材はどれもサッパリとしていて、コクが足りません。このコクを補うためにわざわざピーナッツ味噌ダレを合わせるのです。
味噌の塩気、具に入れる米麺ブン(ビーフン)のほんのりした酸味、タレに入れる赤唐辛子の辛味、タレに入れる砂糖の甘味、ピーナッツのコク、具の海老の赤、具に入れる野菜やハーブの青、ライスペーパーの白、ハーブの良い香り、ピーナッツの香ばしさ……。生春巻き1品を取ってもこれだけの要素がつまっているのですね。
★-----2大食文化の影響
さらに、ベトナムが持つ歴史的背景も、「おいしさ」の秘密と関係があります。
ベトナムの民族は、1000年にわたる中国の支配の後に独立を果たして、ベトナム王朝を成立させます。王朝は入れ代わりながら20世紀まで続きました。また、19世紀末にフランスの侵略をうけ、3分割して植民地統治されました。
このような歴史的背景から、ベトナムの食文化はさまざまな影響を受けてきました。
箸や茶碗を使うこと、お茶を飲むこと、白いごはんを主食とすること、粉を加工して麺や餅を作ることなど中国の影響は大きいのです。
一方、フランス統治の時代は、中国に比べると短いのですが、多くの食文化の影響を受けました。この時代、フランス人はベトナム人達にコショウ、コーヒー、スパイスなどのプランテーションをさせていました。ベトナムのどんな田舎に行っても、フランスパンとコーヒーを飲む習慣があるのは、この時代に伝わったものです。トマトを使った肉の煮込み料理や生野菜をサラダ風に食べるのもフランスの影響でしょう。
このような食の観念とさまざまな文化の影響から、独自のベトナム食の文化とおいしさが生まれていったのです。
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